”心を突く”フェンシングから学べるスポーツの魅せ方

11月2日(土)に全日本フェンシング選手権(女子)の観戦に行ってきました。

初めてのフェンシング観戦。
ベンチャースポーツでここ最近で大きくなってきているフェンシング。
特にエンターテイメントの分野には力を入れており、自分が今大会に行きたいと思ったのも競技自体も観たかったというのもありますが、フェンシングのエンターテイメントはどういうものなのかを知りたかったのが大きかったです。

実際に観戦した感想を述べながら大会レポートを記そうと思います。

 

試合会場が体育館ではない

今回の全日本フェンシング選手権大会(準決勝・決勝)が行われたのは
新しくなった渋谷公会堂”LINE CUBE SHIBUYA”

あれ?体育館ではない。
本来ならアーティストのライブや講演会イベント等で使用される場所です。
(ちなみに予選は駒沢体育館で行われました。)

フェンシングは2m×14mの長さのコートで試合が行われるため、
舞台のある場所でのプレイが可能であるスポーツだからこそできることでしょう。

初めてフェンシングを観に行った者の感想としては
室内競技のスポーツ観戦が体育館ではなく渋谷公会堂であることは新鮮さがありました。

 

また、バスケットボールのような体育館競技や野球・サッカーなどの外会場の競技と違ってフードやドリンクの販売はなく室内も飲食禁止でした。そこに対して不便さを感じたわけではなく、飲める・食べれるという付加価値を設けずにフェンシングというスポーツコンテンツのみで満足度高いものを観せることがすごいと感じました。

実際に会場にあったブースはグッズ販売ブースとフェンシング体験ブースのみでした。

オープニングのクオリティが高すぎる

初めてフェンシング大会を観に行った私が驚いたのはオープニングのクオリティ。
むしろここに期待して今回は観にいったのですが、、、

音楽・ライト演出・ダンサー・DJ
誰が観ても「すごい!!」「かっこいい!!」と言ってしまう内容でした

 

1番最初にフェンシングという世界観へ引き込む。
さらにフェンシング=かっこいいを演出で引き出す。
最後に主役の選手をもってきてその後の試合へ繋げていく。

”フェンシング”を全面に出し、本来の全日本フェンシング選手権大会の試合へと繋げていく演出に感動しました。いかに音楽や映像・ダンスなどをうまく使って”フェンシング”というものを魅せるかを考えてのオープニングでしたね。

他のスポーツでもエンターテイメントに力を入れているところはたくさんあります。それほどスポーツ×エンターテイメントは多くの人に感動体験を与え、スポーツそのものにも大き影響を与えるものなのです。

ベンチャースポーツの中にはそこまでクオリティの高いエンターテイメントをしたくてもお金がない!という理由でできないところも多いかと思います。スポーツ競技の普及から見ればエンターテイメントはスポーツを知ってもらう・興味を持ってもらうという手段でしかありません。優先順位を1番に持ってくるものでもないと思います。

しかしスポーツ×エンターテイメントは今現在だけではなく、今後さらに重要なジャンルでありもっともっと面白くなってきます。言い方は悪いかもしれませんが、あなたが現在やっているスポーツを広めるためにエンターテイメントをそう利用するのか。どう使ってそのスポーツを魅せていくのか

フェンシング協会はこれがすごく上手ですね。

あなたのポーツはどのような魅せ方だと周りが興味を持つのか。
今ある限りでもできることはないか1度考えてみるのもいいですね。

 

参加型と可視化

さあ、実際の試合はどうでしょうか。

私は初めての観戦なうえ、ルールもよくわかっていない”にわか”ものです。
そんな自分でもわかりやすく集中して観れる工夫がたくさんありました。

1つ目は「デモンストレーション

フェンシングにはエペ、フルーレ、サーブルの3つの種目があります。どれがどんなルールなのかを試合前にデモンストレーションをしていました。ルール説明は文字や音声、動画いろんな方法で知ることが可能ですが、試合前に1つ1つの動きをゆっくりと、そして丁寧に説明しながら行われていたのです。

これには初心者の私でも「そういう点の取り方なのか!」と理解した上で試合観戦をすることができたので試合を見ていても飽きずに、むしろ集中して観てしまいました。

2つ目は「ラジオ解説

入場時にイヤホン付きの機械を一緒に渡されました。
これはなんだ?と思いながら受け取りましたが、試合を見る上ですごく重要なものでした。

実はこれはラジオで、試合中に生解説をしてくれます。
よくスポーツ実況がテレビで行われていますが、それを会場で味わうことができるのです。聞きたい人が聞けるスタイルなので、試合の緊張感を壊さず初心者にはわかりやすい解説が聞ける仕組み。選手の裏情報も話していたので時々笑いが起きることもありました。

 

ベンチャースポーツでよくあるのが、ルールが複雑でわからない。わからないからつまらない。そう感じさせてしまい、初見の人が集まらない状況が多々あります。
そのためスポーツを知ってもらおうと体験会イベントや教室をやっています。もちろんそれも大事ですが、「観てもらうためには」のハードルを下げるためにそのスポーツが「わかる」という状況をいかに作り出せるかが重要です。

フェンシングは「デモンストレーション」「ラジオ解説」がそれにあたりますね。

 

3つ目は「選手映像

フェンシングは顔が見えないスポーツ。
特にフェンシングを詳しく知らない方は、正直選手自体もよく知らないと思います。どんな選手がいて、特技や魅力、なんなら趣味までわかる人はずーっとフェンシングを見てきた人でしょう。

そんな選手のことをよく知らない方でも「この選手気になる」と思わせてくれたのが試合前の選手紹介動画でした。

過去の成績やこの試合にかける想いが記録されていて、選手のストーリーが応援につながっていきました。さらには大会前にTwitterで選手が「ペットボトルチャレンジ」をしている動画も、選手を知る1つでしたし、顔を見ることのできない試合中も、舞台の両端に選手とその選手のキャッチコピーを写している画面があり、「誰が」「どんな選手か」を常に見えるようにしていたのもよりフェンシングや選手自身に興味を持つ要素でした。


4つ目は「心拍数」「FENCING VISUALIZED」「3D映像」を使ったフェンシングの可視化

普段見えないところが見える”というのは特別感があり、より興味をもったり面白さを感じる要素です。
先ほどの選手映像は選手という個人にフォーカスした可視化です。「心拍数」「FENCING VISUALIZE」「3D映像」はフェンシング自体を可視化させたものです。(心拍数とかは個人にもなりますかね)

スポーツ選手が試合中どのくらいドキドキしているのか。
フェンシングの剣の軌道はどう動いているのか。
自分たちが見えていない反対側&上側からみるとどうなっているのか。

そんな見てみたくても見れないものがテクノロジーを使用して可視化しています。「こうなっていたのか」とにわか者でもコアファンでも新しい発見ができるので飽きずにフェンシング観戦ができます。

この「可視化」は1つ目と2つ目にも述べた「わかりやすさ」にも関わります。
人間は5感を使ってそこの情報を得ます。特に目からの情報は多いですよね。今大会のフェンシングでは”得点を獲得”というものにも、得点したら”光る”という視覚情報だけでなく重低音を響かせ”音””振動”でも情報を与えていました。

 

“見えないものが見える特別感”と”にわかでもわかるわかりやすさ”を資格、聴覚で最大限に表現していました。

 

最後に5つ目は観戦者が楽しめる参加型コンテンツ

観戦しに行く人はそのスポーツを観るために足を運んでいるため「観る」だけで終わりがちです。
しかし観戦者もこの大会の一部であると思える参加型のコンテンツがあると会場の全員と共有できたという特別な体験ができます。

今回、全日本フェンシング選手権大会では大画面に表示されたフェンシングのミニゲーム。「トゥシュ!!(突く)」「パラード!!(防御)」と画面に写し出されたタイミングで、みんなでそう叫ぶと画面のフェンシング選手がその通りに動き試合をするゲームです。

ただ観て終わるのではなく、みんなでフェンシングを楽しむ参加型のコンテンツで子どもも大人も同じ体験を共有できるのです。
この”共有”というワードは大事ですね。共有することでファン化やコミュニティ化が出てきますから。

動画はこちらです→IMG_5201

 

観戦体験の重要性

実際に全日本フェンシング選手権大会に行って、どんな感じだったのかを感想とともに記してみました。
今大会で新たにフェンシングのかっこよさと1対1の勝負の駆け引きの面白さを知りました。
そしてスポーツ×エンターテイメントの可能性やスポーツの魅せ方、ファン(コアの方からにわかな方まで)への配慮など学べるものがたくさんあり、今のベンチャスポーツへ生かすべきものばかりでした。

スポーツによっては金銭面や注目度などが至らず、「フェンシングとは違うからできない」というものもあるかもしれません。

確かに、今回フェンシング協会が開催した規模を全てのスポーツがやれるわけではありません。
しかし、工夫の仕方でできることはあります。そのスポーツをして欲しい。生涯スポーツにしたい一心で「する」の方ばかり気を取られてしまいがちですが、観戦体験こそ、そのスポーツへと引き込みライフスタイルの一部にできるものなのです。

今回のフェンシングだけでなく、先日終了したラグビーW杯もその例です。
プレイしたこともない。ルールもわからない。というにわかファンはテレビ、会場、パブリックビューイングなどの観戦体験を得て、
ここまでラグビーが面白い!と感じる人や応援したい!という人がものすごく増えたんです。(もちろんたくさんの戦略と行動があってこそですが)

 

スポーツは「する」だけではありません。「観る」と「する」は繋がっています。
大会を振り返ってみると、「試合をどうまわすか」そんなことに囚われていませんか?
選手が気持ちよく試合できる環境を作るは最重要です。しかし見にきてくれる人は?観戦しに来てくれる人たちを楽しませるためにはどうしたらいいか?そこに普及へのヒントが転がっているかもしれません。

ぜひ1度あなたのスポーツを考えてみてはいかがでしょうか。

 

 


各スポーツや大会、イベントなどあなたのスポーツ活動を紹介いたします。
ご興味・ご質問等ある方はこちらから問い合わせください。

最新情報をチェックしよう!