違いに対する”困難”はマイナスなのか。”やさしくないミュージアム”が伝えたいメッセージ

どうも。
スポーツライフデザイナーの古田優です。

“スポーツライフデザイナー”とは
暮らしが少しでも楽しくなるために、スポーツというエンタテインメントをライフスタイルにデザインしていくもの。

パラリンピックでアスリートたちが活躍している中、パラアスリートのすごさと車椅子生活でのやさしくない日常を実感できるミュージアム『やさしくないミュージアム』に行ってきました。

IPC & WOWOW パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ
WHO I AM HOUSE Powered by TOKYO GAS
https://www.unfriendly-museum-wiah.com

どんな場所だったのか、パラアスリートの凄さや伝えたい想いとは何なのか。
実際に訪れ感じたことをシェアしていこうと思います。

数々のやさしくない展示

ミュージアムには7つのやさしくない展示がありました。
それぞれの展示を通常の車いすやバスケットやラグビーで使用される車いすに乗り体験していきます。

①まっすぐ進めない展示

ここでは車いすテニスの動きと体験。
まっすぐ進むではなく、車いすテニスの動きのようなジグザクした道を車いすで進んでいきます。

最近の車いすは軽く動きやすくなっていますが、競技用はさらに小回りが効くものなので少し片側のタイヤを押せばすぐ回ってしまう状態。「進む」「後退する」「曲がる」「回る」など多彩な動きが小さな力でできます。

しかし、その分コントロールが難しいです。
例えばその場で時計回りに回る場合、右手側のタイヤは後ろに回し左手側のタイヤは前に回します。

それを車いすテニスの人はラケットを持ちながらボールを追いかけ、一瞬で追いつく。
なんと1試合に行うターンの数は500以上になることもあるそうです。
スピードと巧みなコントロール技術は見ているだけではわからない凄さです。

②離れすぎている展示

車いすフェンシングを通して離れすぎを体験。
車いすからフェンシングで使用する剣と同じ長さの棒を使い、壁のパネルを回せるかというもの。

車いすフェンシングは上半身の体幹だけで素早く突きあいます。
剣はは腕の長さに応じて長さ調整されるため、距離はお互い平等の中で行われます。

車いすから乗り出さないと届かないため、上半身の体幹の強さが圧倒的に必要です。
プレイを見ていても前後左右に結構動く印象でしたが、想像以上に乗り出していることを実感しました。

③遠すぎる展示

ここではアーチェリーの的の遠さを知る展示。
50m先の直径48cmの的または70m先の直径122cmの的を狙う2つがあります。
70mの10点はDVD1枚ほどの大きさらしいです。

ここでは約5分の1ほどの大きさにして、実際のアーチェリー選手の視点からの的の大きさを見ることができました。
あなたは先にある的がわかりますか?

④重すぎる扉の先にある展示

ここはリオパラリンピック、東京パラリンピックで銅メダルを獲得した車いすラグビーのタックルを再現。
といっても実際に人とぶつかるのではなく、少し重たい壁を車いすで押してみようというもの。

健常者が手で押して開けるには簡単なのですが、車いすとなると腕の力で押さなきゃいけないので時間も力も倍以上必要です。そんなやさしくない状況以上に選手たちはパワーを人と人、車いすと車いすを全力でぶつけて戦っていると考えると、もう超人の域です。

チームのために全力でぶつかり道を開ける。切り開いた道でトライを決める。
唯一ぶつかっていいとされている競技である車いすラグビーは超人かつ仲間思いに溢れたスポーツであると強く実感しました。

⑤届かない展示

車いす卓球からどれだけ届かないのかを体験できる展示。
実際の卓球台と様々な卓球ボールの軌道があるのですが、明らかに届かないだろ!というボールばかり。

必死に手を伸ばしボールコントロールする卓球選手の凄さに驚愕しました。

⑥高すぎる展示

パラスポーツでも人気競技である車いすバスケットのゴールの高さから、やさしくない高すぎるを体験。

車いすバスケットボールはコートの広さやゴールの高さはオリンピックのバスケットボールと同じです。
通常であれば膝を使って遠くのゴールをシュートしたり、高さを補ったりしますが、車いすのため腕の力や手首の力でボールを放ちます。

過去に体験したことあるのですが、そもそもリングのボールを当てることすらできませんでした。試合を見ていると選手たちは普通にシュートを打っています。実はそれ自体がすごいことなんです。

ましてローポインターと呼ばれる障害度合いが重たい人は、腰を支えるため椅子の高さも低いです。
それでレイアップシュートやミドルシュートを決めてしまうんですから驚愕ですよね。

⑦速すぎる展示

ここでは陸上の速さを体験。
車いすレース男子100mの世界記録は13秒63。1秒で7m以上進む計算です。
実際に7mを走ってみましたが、1度押すだけで1秒経ち2m進んだかな?という状態。

さらには、マラソン選手の最速時速にも挑戦。速い時には時速40~50km出すらしいのですが、私は30秒で最大時速17km。開始10秒でバテました。到底アスリートには届きません。

困難を乗り越えてきたからこそのアスリート

パラリンピックのアスリートは多くのハンデがあり、そのせいで困難な壁もたくさんあったと思います。

それでもアスリートたちは全力でその困難に挑み、乗り越えていく。
その姿に人は心を動かされ、「自分も頑張ろう」と思わせてくれる人たちです。

やさしくないミュージアムではアスリートたちのメッセージも飾られていました。

僕にとって”困難”は、ただ乗り越えるためにある

リカルディーニョ(ブラジル/ブラインドサッカー)

困難な道を歩むのは楽じゃない。
でもそれは同時に自分が成長できるチャンスなんだ。

カーティス・マグラス(オーストラリア/カヌー)

障がいから学んだことは「違っていてもいい」ということ。
誰もがどこか違っている。違うことは楽しいこと。
新しい扉を開けるの。悪いことじゃない。

カレオ・カナヘレ(アメリカ/シッティングバレーボール)

人々が障がい者を見た時「何ができないか」ではなく
「何ができるか」に目を向ける日が来てほしい。

エリー・コール(オーストラリア/水泳)

一部のメッセージのみですが、この1つ1つの言葉に重みを感じ、勇気をもらいました。
ただ、スポーツが好き。車いすとミュージアムというエンタメ体験が気になる。
それだけで参加したものですが、すごく心が動かされた時間でした。

やさしくないミュージアムが伝えたいメッセージ

やさしくないミュージアムはこのパラリンピックで3日間の期間限定で行われたミュージアムです。

”車いすにとって困難を強いられる体験を通して、パラアスリートの凄さを実感してもらう。そして人々の中にある固定化された価値観がを壊していきたい”

そんな思いから作られたそうです。

よくよく考えてみれば、普段の生活で”困難”や”違い”に出くわすことなんてたくさんあります。これは障がいの有無関係なく全ての人に。

私個人の話でいうと、トランスジェンダーということが一番の困難であり人と大きく違うことかもしれません。それでも、苦しいことばかりでなくだからこそ得られた幸せや楽しい瞬間もあります。

経済の豊かさや文化の違い、料理の得意不得意や身長の大きさなど誰しもあなたにとっての”やさしくない”状況があるはずです。どんな”困難”があろうともあなたの人生が輝くかどうかは「自分=WHO AM I」次第。自分自身が変われば、未来も社会も変わることを知ってほしい。

そんなメッセージをパラスポーツから、車いす体験から伝えています。

体験できなかった人も、東京パラリンピックで一生懸命挑戦するパラアスリートから上記のようなメッセージを感じ取ってくれたらいいなと思います。

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